フォルテピアノの日々の手入れ

長期間、弾き込んでいくとちょっとした不具合も起きることはフォルテピアノでなくても古楽器では日常茶飯事。その為、古楽器を所有する人は毎日の天気や湿度にも注意を払いつつ、簡単なメンテナンスは自分で出来なくてはなりません。
今日はこのシュタインのフォルテピアノのハンマーの位置が打鍵時にややずれて2本ある弦の片方に当たりづらくなったためその位置を直しました。直すと言っても指先でちょっと押してやったり、つまんでやったり捻ったりが割と多いんです。
古楽器ってこうした「指先だけの操作」が演奏時のみならず、メンテナンスにも共通するものがあるんですね。
こうした時は当然ながら、楽器内部からアクション(ハンマーと鍵盤がズラーッと並んで一体化した部分)を引き抜いてから行います。引き抜いた感じがこちら。
もう何十回これを引き出したことか笑

その中のハンマーを一本、取り出してみるとこんな感じになります。親指の先に見えるのがハンマーヘッドですが、これで細い弦を2本打つわけです。
ちなみに現代のモダンピアノは3本打ちますがハンマーヘッドの大きさの差も一目瞭然ですね。
茶色の薄い鹿の革を控えめに巻いてあります。

このシュタインのハンマーヘッドも、1783年以前は革さえ巻かず裸木のハンマーで直接弦を叩いていたようです。したがって、モーツァルトが1777年に初めてシュタインのピアノを弾いて感激した際の音色はチェンバロにかなり近い、タンゲンテンフリューゲルのような音色だったと言われています。
その一部始終を父、レオポルドに宛てた有名な手紙にそれまで「一番のお気に入り」だったというシュペートという製作者の楽器(これは裸木のハンマーで打弦するタンゲンテンフリューゲルであることがはっきりしています)との比較があれこれ挙げられているのですが、一番の関心事でもあろうはずの音色について何も書かれていないことからも音色はシュペートのものと差異があまりなかったからとも考えられています。
教室のこのシュタインは、高音域以外は完全な裸木のハンマーではないけれど、前述のように控えめに鹿革を巻くことで通常のフォルテピアノとタンゲンテンフリューゲルの持ち味の良さも併せ持つ音色になっています。

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