今日は17世紀フランスで唯一の女性作曲家 Elisabeth-Claude Jacquet de la Guerre エリザベト・ジャケ・ド・ラ・ゲール1665〜1729)の誕生日。
ちなみにラ・ゲールLa guerreは戦争を意味するフランス語。この単語が姓の一部になっているのも凄いですが戦争に明け暮れたルイ14世統治下、音楽や美術の世界ではほぼ完全に男社会であった過酷な時代を生き抜いた(闘い抜いた?)ことはこの女性の作品を弾くときにいつも思い馳せる事です。
またフランス音楽史上、オペラを作曲した最初の女性であり、他にもトリオ・ソナタ、ヴァイオリンソナタ、カンタータなど多彩な作品を残しました。
1687年、22歳の時に国王ルイ14世に献呈し、出版したクラヴサン曲集から2曲紹介します。
♬クラヴサン曲集(1687年)より
第3組曲イ短調から
①プレリュード・ノン・ムジュレ(拍節・小節線無しのプレリュード)
②シャコンヌ
(※17世紀末のフランス独特の調律法にしてるので異様な響きになってます♪)
チェンバロ製作や演奏を生業とする家系に生まれ、8歳の時には当時の有名な音楽雑誌に「大変な難曲を初見で歌い、クラヴサンをこの上なく見事に、どんな調でも移調して弾きこなし作曲も巧み、パリに奇跡が出現している」とまでスクープされるほどの天才少女として名を馳せました。
15歳から王宮に出仕、ルイ14世の庇護を受けながら次々作品を発表。しかし39歳頃、20年連れ添った夫を亡くしてまもなく10歳の一人息子(母同様に見事にクラヴサンを弾きこなしたそう)も失うという不幸が襲います。
25年後、64歳で体調を崩し外科医の往診で瀉血を4回も受けたのが悪かったのか数ヶ月の後、逝去。
遺品目録には数台のクラヴサンや宝飾品、銀食器類のほか、アイロン2台(!)と愛用の部屋着を長年仕えてくれた家政婦に遺贈したそう。
画像は30歳頃のド・ラ・ゲールの肖像画とプレリュードの譜面(拍子や小節線は一切無く、テンポやアゴーギクは奏者の自由に委ねられてます。)